みなさん「下流老人」や「老後破産」という言葉を耳にしたことがあると思います。
ですが、その一方で、実際に自分がそうなると思っている人がどれだけいるのでしょうか。
年金生活をする高齢者世帯の7割が「老後破産」のリスクに晒されるというデータがあります。
言い換えれば、預貯金が底をつくことなく生涯を終えることができるのは、3割にすぎないということなのです。
これからの時代、「年金と退職金で暮らす」ことは困難です。
例えば、現在45歳の夫婦で高校生(16歳)の長男と中学生(13歳)の次男がいる4人家族のモデルケースを考えてみます。
夫婦共働きで世帯年収は650万円、預貯金残高は300万円という平均的なサラリーマン世帯です。
3年後に長男が大学、次男が高校進学することで教育費がかさむことから支出が収入を上回ってしまいますが、預貯金を取り崩すことでどうにか賄えます。
65歳で定年を迎えると、1500万円の退職金を手にすることで収入は大きく跳ね上がり、預貯金残高も膨らみます。
ところが、その後も住宅ローンの返済は続き、自宅の改修費や車の買い換えなど一時的な支出もあって収支は常に赤字。
年金収入だけでは賄えず、預貯金を取り崩す生活を続けているうちに預貯金は底を突き、介護が必要になった時点で「老後破産」へと陥ってしまうのです。
これは別に、極端な例ではありません。ごく普通に思えるような家庭でも、十分に起こり得るケースといえます。
現在でも、女性の2人に1人、男性の4人に1人が90歳以上まで長生きしています。
90歳まで生きるなら、半数どころか、それを上回る7割もの高齢者が老後破産リスクを抱えているのです。預貯金が底をついた後の長い生活を、どのように過ごせばよいのでしょうか。
しかもこの先、さらに問題は深刻化します。
現役世代の中高年の収入は減少しているのに社会保険料はアップ。
負担が増えているにもかかわらず、年金の支給開始年齢の引上げや、年金額の減少は目に見えています。
親世代に持ち家などの資産があれば、それを売ってどうにかしのげるかもしれませんが、その後は何も残りません。
自分たちの子ども、さらにその下の世代まで考えていくと、老後破産リスクは今後ますます高まっていくことが予想されます。
「老後破産」への契機はそこかしこに潜んでいます。
リストラなど自身の仕事を取り巻く環境の悪化もあれば、病気や介護といった自身や家族の健康問題による収入減も考えられます。
また老後は「イベント破産」にも注意が必要です。
まとまった退職金を手にすることで気が大きくなり、現役時代には叶わなかった贅沢な海外旅行や高級車にお金を回したり、子どもに多額の資金援助をしたりすれば、見る見るうちに底を突きます。
では、どうすればいいのか。下流転落を防ぐ手立ては定年後では間に合いません。
現役時代からサードライフ(健康ではなくなった老後)を見据えた準備が必要です。
自分や配偶者は年金を将来もしくは万が一のときにいくらもらえるか、税金や保険料などの公的支出の削減はできるのかを確認することや、生命保険などの保障は十分か見直しを行うこと、老後も意欲を持って過ごしていくための生きがいを見つけることは大切です。
少しでも多くの人の未来が明るくなりますように。
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