介護保険制度の主な歩み

平成12年(2000年)に発足した介護保険制度は、3年ごとに改定が行われることになっており、平成18年(2006年)、平成24年(2012年)、平成27年(2015年)は、それぞれに重要な改定が行われました。特に、平成27年(2015年)の改定は、大規模な内容でした。

1.平成18年(2006年)制度改定
まず、平成18年(2006年)の介護保険制度改定で大きな出来事としては、介護保険外の補助事業として行われていた「介護予防・地域支え合い事業」が介護保険内に組み込まれたことです。
他にも、「要介護1」が「要介護1」と「要支援2」に分けられたこと。
要支援の対象者を増やす一方で、介護報酬を引き下げました。
更に、地域包括支援センターが創設されたことも、地域密着型の介護を進めるにあたり、大きな改定であったと言えます。

2.平成24年(2012年)制度改定
平成24年(2012年)の最も注目されるべき改定は、「地域包括ケアシステム」の推進でしょう。
地域に根差した介護を目指し、誰もが住み慣れた町で介護が受けられるような環境を作ることが、各自治体に義務付けられました。

3.平成27年(2015年)制度改定
⓵ 全ての市町村で「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」を実施

「要支援者」が利用している「訪問介護(ホームヘルプサービス)」「通所介護(デイサービス)」について、平成29年度末までに市区町村が実施主体となる「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行されました。
これまで要支援者が利用していた訪問介護や通所介護に関するサービス種類・基準・単位は全国一律で同一の基準となっていましたが、移行後は、市区町村が地域の実情等を踏まえて、サービス種類・基準・単価等を定めることとなりました。

⓶ 一定以上所得者の介護保険サービス自己負担増
平成27年(2015年)8月より、これまでは所得に関わらず一律1割だった自己負担が、第1号被保険者で一定以上所得者は、介護保険サービス利用時の自己負担が2割へと変更になりました。
「一定以上所得者」の定義は、所得金額で年間160万円(単身で年金収入のみの場合は年収280万円)ですが、特例的に1割になる要件も作られています。

さらに、平成27年(2015年)8月より、同一世帯内に現役並み所得者がいる場合、その世帯の高額介護サービス費「自己負担限度額」が「37,200円」から「44,400円」に引き上げられました。

⓷ 特定入所者介護サービス費に「配偶者の所得」や「預貯金」を勘案
これまで、住民票上、住民税非課税世帯であれば、特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)の対象者とされていましたが、平成27年(2015年)8月以降は、「預貯金等」の資産要件に加え、配偶者との世帯が分離していても、配偶者の所得を勘案し、特定入所者介護サービス費の対象者かを判断することになりました。
さらに、平成28年(2016年)8月以降は、特定入所者介護サービス費の判定に用いる公的年金に遺族年金や障害年金等の非課税年金を含めることになりました。

⓸ 特別養護老人ホームの入居制限
要介護1以上が入所要件であった特別養護老人ホームへは、平成27年(2015年)改定以降、要介護3以上でなければ、原則入所申し込みができなくなりました。

⓹ 介護職の処遇改善と資格について
介護従事者に対して、処遇改善を図るため、一人当たり12,000円の処遇改善手当が支給されることになりました。また、「介護福祉士」の資格取得方法の見直しがあり、介護福祉士の取得がこれまで以上に困難になりました。

⓺ 全ての市区町村で認知症対策の新事業を義務化
認知症患者は2025年に700万人に達すると言われており、市区町村での早急な対策が求められています。
そこで、「認知症初期集中支援推進事業」、「認知症地域支援推進員設置事業」、「認知症ケア向上推進事業」の3つを平成30年までに各市区町村でスタートさせることが義務付けられました。

⓻ 介護と医療の連携強化
地域包括ケアシステムの考え方は、地域密着型の介護であり、介護と医療の連携は不可欠であることから、地域医療・介護連携推進事業が推進されることとなりました。

4.平成30年(2018年)制度改定
⓵ 新たな介護保険施設として「介護医療院」を創設
日常的な医学管理が必要な重介護者の受入機能、看取り・ターミナル機能、生活施設機能を持ち、要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供するあらたな施設が創設されました。

⓶ 現役世代並みの所得のある者の利用者負担割合の見直し
世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、2割負担者のうち特に所得の高い層(年金収入等340万円以上)の負担割合を3割としました。

第8期(2021年度)改正についても、検討事項が公開されていますので、次の投稿でお知らせします。

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