セミナーや研修で、受講者に「2025年問題」について尋ねることがあります。
実のところ、「2025年問題という言葉は聞いたことがあるが、内容はよくわからない」のが現状なのです。
平成27年度介護保険事業状況報告(年報)によると、65歳から75歳までの要介護認定率は約5%です。
ところが、75歳以上の要介護認定率は約33%になります。
つまり、後期高齢者になると、介護を必要とする可能性が急激に高くなるということです。
このため、「団塊の世代が2025年頃までに75歳以上の後期高齢者となるために、介護・医療費など社会保障費の急増が懸念される問題」を2025年問題と言われています。
さらに、団塊の世代を親に持つ働き盛り世代の介護離職が激増することも懸念されています。
その理由は3つ考えられます。
1つ目は、大切な家族のため、自分が介護しなければならないという責任感です。
「施設に預けるのは申し訳ない」
「働いている間が心配で仕事が手につかない」
「一人っ子のため頼れる親族がいない」
そんな声をよく聞きます。
2つ目は、介護サービス費用の負担を減らすために、自分が介護しなければならないという金銭問題です。
家族が安心して仕事ができるほどの介護サービスには想像以上の費用がかかります。
利用者が介護費用を捻出できなければ、家族が手を出すかお金を出すかしなければならず、退職を選択する人が少なくありません。
そして3つ目は、仕事と介護の両立が難しいという職場環境です。
「介護休業の制度はあるが、利用の仕方がわからない」
「介護休業を取得した職員がいないため、言い出しにくい」
「人事労務担当者に介護の話が通じない」
従業員はそんな悩みを抱えています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、現に、介護を機に離職をした理由の上位は、
1.仕事と介護の両立が難しい職場だったため
2.自分の心身の健康状態が悪化したため
3.自身の希望として介護に専念したかったため
4.施設へ入所できず介護の負担が増えたため
5.自分自身で介護するとサービスなどの利用料を軽減できるため
です。
ですが、介護を機に仕事をやめた時、仕事を「続けたかった」と回答した離職者は、男性56.0%、女性55.7%と、過半数が働き続けたかったのです。
さらに、離職後、「負担が増した」としている人は、「精神面」について64.9%、「肉体面」について56.6%、「経済面」について74.9%であり、いずれも負担が減るのではなく、むしろ増したとの回答割合が高くなっているのです。
継続的に介護を行うためには、経済的な負担がかかります。
介護が終了した後の生活を視野に入れて考えても、経済的基盤は重要です。
また、社会との繋がりが断たれ、介護を抱え込んでしまうことで、心身ともに追い込まれていく恐れがあります。
企業においても、大切な従業員を介護のために失うことは大きな損失であり、企業の持続的な発展に影響が出てくることになるのです。
では、仕事と介護を両立させるためには、どうすればよいでしょうか。
次回はそんなお話をします。
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